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学位名称の見直しに思う 〜個人的には筋が悪い話〜

大学一般

学士の名称急増700種類、見直し求める報告書 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 研究者の代表機関である日本学術会議は17日、大学が卒業時に与える学位「学士」の名称について、約700種類と過度に多様化した結果、内容が不明確で国際的にも通用しないものが多いとして、大学側に見直しを求める報告書を出した。

 日本学術会議文部科学省に対し、大学が授与する学位名称の見直しに関する報告書を提出した記事が出ていました。当該報告書を基に今後文科省内にて検討が行われるでしょうが、非常に筋が悪い話だなと感じました。脊髄反射的に書いているため、あまりしっかり調べきれていないところもありますが、どの点に違和感を持ったのか整理します。

 記事中にもあるとおり、平成3年の学校教育法及び大学設置基準の改正により、学位の専攻分野名(学士(○○)の○○部分)(以下、「学位名称」という。)について大学の判断で定められるとなりました。該当する規則及び関連する文献等を以下に示します。

学位規則

(専攻分野の名称)
第十条  大学及び独立行政法人大学評価・学位授与機構は、学位を授与するに当たつては、適切な専攻分野の名称を付記するものとする。

学位に付記する専攻分野の新たな名称の傾向(学位研究第12号)

私学高等教育研究所 :アルカディア学報|日本私立大学協会

 そんな学位名称ですが、現状では以下のような取扱いになっているようです。

日本学術会議|大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会

資料1 大学設置審査における学位に付記する専攻分野の名称の取扱い(文部科学省提出資料)

2.大学設置審査等における取扱い

(1)実際の運用においては、組織変更を伴う場合についてのみ、設置審査や届出設置の事前相談において実質的に学位名称の妥当性の判断をし、審議会の意見として伝達している。ただし、学位名称に関する意見は大学側の良識による改善を促すという性格が強い。

(2)組織変更を伴わずに学位名称のみを変更した場合は、学位規程の変更の報告がなされるのみである。なお、学則にも学位名称に関する定めを置いている場合は学則変更の届出も併せて行われる。学位規程変更の報告や学則変更の届出は届出設置(組織変更)とは異なる手続となるため、問題があっても是正措置命令(学校教育法第四条第三項)を発することはできない。

 私は実際に学位名称変更の手続きを行ったことがありませんので、今回調べてみて取扱いを知ることになりました。改組や教育課程変更を行わずとも学位名称を変更できるようですね。しかし、実際に学位名称のみを変更するケースがあるのかどうかは知りませんが、学位名称「のみ」を変更するというのは一体どのような理由、どのような論理で行われるのでしょうか。

 学位とは、言うまでもなく大学教育のアウトプットの一つです。昨今の大学教育全体の流れでは、まずDPを定めそれに合わせてCPやAPを設定するものだという認識です。つまり、AP→CP→DP→学位という流れが大学教育の基本単位である「学位プログラム」であり、国や認証評価機関もこの考え方を推進してきたと考えています。学位名称はこの学位プログラムの分野をその内容から表現したものであり、各大学が検討し決定してきたものという認識です。

 一度決めたものを変えるには、変える必要があるという合理的な理由が必要です。学位名称は学位プログラムの分野を表現したものであるという前提に立つと、学位プログラムの変更がない限り学位名称の変更には違和感があります。制度上教育課程等を変更せずとも学位名称を変更できるとしても、変更の意味が学位プログラム上で明確でなければ、だからといってひょこひょこ変更していいのかというのは別問題だと思います。明確な意味なく変更した場合、変更前の学位名称の意味は結局何も無かったとなるとともに、変更後の学位名称についてもそのように認識される可能性があると考えます。文部科学省が、各大学にAP,CP,DPを作らせ大学教育の大枠を形成させながらも、今回の件や入試の件などで学位プログラムを揺るがしていることはちょっと理解できないですし一貫性がないとも感じています。

 しかし、私の些細な違和感は置いておくとしても、国際通用性等に課題があるというのは事実でしょうし、全体としてはそれを解決した方が良いでしょうね。おそらくは、粛々と各大学で見直しが行われ、必要に応じて学位名称の変更が行われることでしょう。見直しを求めているだけであるし、ただの看板の掛け変えで教育内容は変わらないから良いじゃないか、という意見も理解できます(納得はできませんが。。。)。本来ならば本件は教育内容にも関連することであると考えており、個人的には学校教育法改正よりも反応してしまうところです。特に、国立大学やスーパーグローバル大学のみならばまだまぁわからないでもないですが、国公私全体に影響を及ぼす内容ですし、もやもやした気持ちがあります。

 今後は文部科学省にて検討が行われるでしょうし、今後の大学設置にも関わってくることですので、恐らく設置審でも検討が行われることと思います。どのような見直し方針等が出されるのか要注目ですね。個人的には、実務上相当大変になると思いますが、ディプロマ・サプリメントの導入を進めていっても良いなと感じています。