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地方の人口減少に思う 〜国立大学はどのような影響を受けるのか〜

首相、税制や社保改革の検討指示 地方創生で石破担当相に:政治:中日新聞(CHUNICHI Web)

 安倍晋三首相は9日、石破茂地方創生担当相と官邸で会い、人口減少の克服と地域経済の成長に向け、税制や社会保障などの制度改革を検討するよう指示した。「地方創生に正面から取り組む。省庁の縦割りを排除し、ばらまき型の対応を絶対にしない」と強調した。

 少し前から地方の人口減少や地域再生に関する議論を良く聞きます。内閣も、新たに地域創生を担当する大臣を設け、対応しているところです。各都道府県でも人口減少への対応を加速している報道が見受けられます。その背景の一つになっているのは、日本創成会議人口減少問題検討分科会が報告した提言だろうと思います。人口減少と地方国立大学に言及した記事も出ています。

時事ドットコム:消滅可能性都市

 消滅可能性都市 2040年に「20〜39歳の女性人口」が半分以下に減ると予想された896市区町村。民間有識者らから成る「日本創成会議」の分科会(座長・増田寛也総務相)が5月に発表した独自の人口推計に基づく。子どもを産む中心的な年齢層の女性が流出し、人口減少に歯止めがかからないと分析されている。

【一筆多論】地方国公立大も「倒産」の危機?+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

 かつて大学の経営破綻は「小規模な地方私立大学の問題」と受け止められることが多かった。だが、民間有識者による「日本創成会議」の分科会が公表した2040年までに自治体の半数が将来的な「消滅」の危機にさらされるとの推計結果を見る限り、今後は国公立大学とて無関係で居続けられるとは言い難い。

 また国立社会保障・人口問題研究所も以前から推計人口を作成しており、都道府県別・市区町村別に継続してデータを提供し続けています。

日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)|国立社会保障・人口問題研究所

 国立社会保障・人口問題研究所は「日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)」をまとめました。この推計は、将来の人口を都道府県別・市区町村別に求めることを目的としたものです。今回の推計では、平成22(2010)年の国勢調査を基に、平成22(2010)年10月1日から平成52(2040)年10月1日までの30年間(5年ごと)について、男女年齢(5歳)階級別の将来人口を推計しました。従来は都道府県別、市区町村別の順にそれぞれ推計していましたが、今回は市区町村別の推計を行い、その結果を合計して都道府県別の人口を得ました(ただし、福島県においては全県での推計のみ実施)。

 大学にとって人口減少に最も影響を受けるものと言えば、受験者数、入学者数の減少でしょう。特に国立大学にとっては、倍率を確保しつつ優秀な受験者を集めるということが大切になってきます。今回は、人口推計に則った場合、国立大学の学部志願者数がどのように推移するかを確認します。

 用いた人口推計データは国立社会保障・人口問題研究所が作成した男女・年齢(5歳)階級別の推計結果(都道府県)です。これには、平成22年度(2010年)を基準人口として、5歳ごとのコホート別に各都道府県の5年ごとの推計人口が記載されています。今回は、大学志願者数の推移を対象としますので、15〜19歳のコホートを使用し、各都道府県の人口推計としました。

 さて、各国立大学の都道府県別志願者数データを入手したいところですが、学校基本調査など公表データにはそれがありません。そこで、出身高校の所在地県別入学者数データ(平成24年度)を大学基本情報から入手し、各国立大学各学部の各都道府県別入学者数に、同じく大学基本情報から入手した入学状況(入学志願者数、入学者数)における各国立大学各学部の志願倍率(入学志願者数/入学者数)を乗することで、各都道府県別志願者数の推測値とします。

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 推測値の当てはまり具合を確認するため、都道府県別志願者数を公表している岡山大学について、平成24年度の推測値と実績値を図1に示します。ここから、完全に一致しているとは言えないものの、概ね近しい値になっていることがわかります。今回は、厳密なシミュレーションを行うのではなく、おおざっぱに傾向を把握することが目的です。その意味では、図1から、用いた推測値は結果に大きく影響を与えないだろうと判断し、この推測方法を用いることとします。なお、出身高校都道府県の「その他」欄については、今回の分析の趣旨を鑑み、除外して計算・グラフ化等を行いました。

 この都道府県別志願者数に対し、各都道府県の15〜19歳の推計人口の2010年度比を乗し、各年度の都道府県別推計志願者数を算出します。推計人口は2010年、学校基本調査は2012年と違いがありますが、おおざっぱに傾向を把握する限りにおいては結果に大きく影響を与えないだろうと判断し、この推測方法を用いることとします。そのため、人口推計上2015年の値は2017年度の推計志願者数、2020年の値は2022年の推計志願者数の算出に反映されています。このような方法を用い、2012年度、17年度、22年度、27年度、32年度、37年度、42年度の各国立大学の都道府県別推計志願者数を算出し、それらを合計することで各国立大学の推計志願者数としました。

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 図2に、各国立大学ごとの推計志願者数の推移及び2012年度志願者数を示します。図2には、2012年度と2042年度の推計志願者数の比を維持率として示します。維持率が高いほど、2012年度に近い推計志願者数であるということです。また、表1に、志願者維持率が大きい5校及び小さい5校を示します。図2及び表1から、全ての国立大学において志願者数が減少する推計であり維持率は80%以下であること、維持率は73.3%から51.0%まで幅があること、維持率が大きい大学には愛知県に所在する大学が多いこと、維持率が小さい大学には北海道・東北に所在する大学が多いことがわかります。

 人口推計では、2010年に対する2040年の15〜19歳人口比は、上位は沖縄県0.76、愛知県0.75、東京都0.75であり、下位は青森県0.44、秋田県0.46、岩手県0.51です。この数値が直接反映され、それぞれの志願者供給都道府県の影響が大きく出たのでしょう。割合を乗していますので、どうしても志願者数が多い大学に影響が大きく出ると思ったのですが、単科大学の中でも維持率が小さい大学があります。恐らく、特定の地域からの学生供給が大きく、その地域の人口減少率に影響されたのでしょう。

 次に志願倍率の推移を確認します。平成24年度入学者数を分母、各年度の推計志願者数を分子とし、各国立大学の推計志願倍率を算出しました。なお、各学部の数値を全て含んだ大学全体の志願倍率であることに留意願います。

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 図3に、各国立大学の各年度における推計志願倍率を示します。また、表2に、2042年度の推計志願倍率が2.0以下の国立大学を示します。図3及び表2から、全ての国立大学において推計志願倍率が減少傾向にあること、平均志願倍率は2012年度の4.27から減少を続け2042年度には36%減の2.70になること、2042年度に推計志願倍率が2.0を下回る大学が16大学あることがわかります。

 当たり前ですが、推計志願者数の減少に伴い志願倍率も低下しています。2042年度の推計志願倍率では、京都大学(1.78)や東北大学(1.79)、名古屋大学(2.08)など大規模大学が低い数値を出しています。これらの大学は、2012年度時点で3.00前後の比較的低位の志願倍率であり、推計人口比の影響を受け推計志願倍率が他大学よりも比較的低位になったものと考えます。

 なお、2012年度志願倍率に対する2042年度の推計志願倍率の割合は、図2の減少率とほぼ同様の傾向を示しました。

 以上、かなりおおざっぱに推測を重ね、地方の人口減少が国立大学に与える影響を考えてきました。もちろん、志願者の動向はこんなに単純な話ではなく、様々な要件に左右されます。この推計通りにはいかないでしょうね。

 今回の記事で言いたいことは、このまま従来のとおりでは志願者数や倍率が低下し、延いては大学教育の質に影響を与える可能性があることは明らかだということです。以前、佐賀大学が学部定員を純減させるというニュースがありましたが、今後このような事例は増える可能性があるなと考えています。

朝日新聞デジタル:国立大、来春の定員減 「学生の質の保証」狙いも - 受験ニュース - 2013年度大学入試センター試験 - 教育

 今回象徴的なのは、佐賀大。「学生の質の保証」のため経済学部の定員を275人から15人減らした。その分大学院定員を増やしたわけではなく、異例の「純減」だ。学内調査で、入試倍率が2倍を切ると入学者の学力が下がる結果が出ており、12年度に1.7倍だった経済学部の定員減に踏み切った。

  18歳人口が減少するのは明らかですので、今回の分析の対象外だった社会人入学者あるいは留学生にこの問題の解決の糸口の一端があるのでしょうし、大学全体のダウンサイジングも併せて現実的に検討しなければならないのかもしれないと改めて感じました。