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中央教育審議会の答申に思う 〜答申の読み方〜

大学設置基準等の改正について(諮問):文部科学省

次の事項について,理由を添えて諮問します。

大学設置基準等の改正について
文部科学大臣 下村 博文
(理由)
 世界的なグローバル化の進展を背景に,高等教育においても,国境を越えた学生の流動性が年々拡大している。これに対応するため,各大学においては,留学の促進のための取組や海外の大学との連携による国際的な教育プログラムの開発等の取組が進められている。こうした大学のグローバル化のための取組を支援するとともに,日本人学生が海外の大学等(大学院,短期大学,専門職大学院を含む。)で学修したり外国人学生を我が国の大学等が受け入れたりするための機会を拡大するため,我が国の大学等と外国の大学等が大学間協定に基づき連携して教育課程を編成することができる仕組み等を構築する必要がある。
 このため,別紙のとおり,大学設置基準等の改正を行う必要があるので,学校教育法第94条の規定に基づき標記の諮問を行うものである。

大学設置基準等の改正について(答申)(中教審第173号):文部科学省

文部科学大臣 下村 博文 殿
中央教育審議会会長 安西 祐一郎
大学設置基準等の改正について(答申)
 平成26年6月23日付け26文科高第259号で諮問のありました標記の件については、これを適当と認めます。

 文部科学省HPに、中央教育審議会にて諮問及び答申が行われた資料が掲載されていました。内容は、国際連携教育課程制度に伴う大学設置基準の改正のようです。詳細は、大学分科会(第118回) 配付資料:文部科学省の資料1に記載されています。

 中央教育審議会については、弊BLOG(中央教育審議会に思う 〜外部者のリソースをどう活用するか〜 )でもその体制等について言及してきました。

文部科学省組織令

中央教育審議会
第八十六条  中央教育審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一  文部科学大臣の諮問に応じて次に掲げる重要事項を調査審議すること。
イ 教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に関する重要事項(第三号に規定するものを除く。)
ロ スポーツの振興に関する重要事項
三  文部科学大臣の諮問に応じて生涯学習に係る機会の整備に関する重要事項を調査審議すること。

 中央教育審議会の果たす役割の一つに、文部科学大臣の諮問に応じて行う調査審議があります。この調査審議の成果が、答申として大臣へ報告されるわけです。これまでに文部科学省所管審議会等で行われた諮問及び答申は、審議会別 諮問・答申等一覧:文部科学省に掲載されています。

 さて、冒頭の設置基準等も答申なのですが、大学職員にとって「答申」と言えば、審議会の審議内容が書かれた報告書や審議まとめをイメージすることが多いと思います。特に広く大学に関係しており、中央教育審議会にて大学分科会以上の決定を経ている答申や審議まとめ等(以下、「答申」という。)は、以下でしょうか。

【答申】

【審議まとめ等】

 よく言われるのが、「大学職員として答申くらい読んでおけ」というニュアンスの言葉です。特に、比較的若い職員に対して言われることが多いかもしれません。言っている意味はわかります。国の教育政策を左右する文書ですし、職業人として確認しておくことが当然ということでしょう。

 ただ、この言葉は結構酷だなぁとも思います。と言うのも、答申の文章は大変読み難く、例え興味関心があったとしても、当該文章だけ読んで文意をつかむことすらなかなか大変だと思っています。なぜ読み難いのかというと、はっきりと言うことはできませんが、一文が長かったり、パラグラフごとに論点が変化したり、文章間の関係性や優先順位が明らかではなかったり、いろいろ要因があるのでしょう。しかし、これは作成者側の話であり、読み手である我々にはいかんともし難いことです。では、どのようにすれば答申が少しでも理解しやすく読めるようになるのでしょうか。実際に、私が答申を初めて読むときに意識している読み方を紹介します。

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 図1に、答申の構成例を示します。あくまで一例ですが、特に近年は、全体像を示した「概要」があり、その次に「本文」があり、本文を補足する形で「用語集」や「資料集」が付随する形が多いと感じています。順番が違うことや「用語集」がない場合などもありますが、以降はこの構成をもとに言を進めていきます。

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 図2に、私が普段行っている答申の読み方を示します。簡単に言えば、頭から読んでいくと途中で疲れるので理解が促進される順番で読んでいく、ということです。

 まずは、概要から読みます。最近の概要は図示等してあるとはいえ、大抵は文字だらけですし、概要だけ読んでもほんとうに大まかなアウトラインにしか把握できないと思います。(むしろ、大まかにでも把握できれば良い方かもしれませんが。。。)

 次に、「本文」を飛ばして、「資料集」を読みます。資料集には答申の発端となった課題がデータ等を用いて説明してあることが多いですので、特に丹念に読むようにしています。一体、この答申ではどのようなことを解決しようとしたのか、まずは答申自身が持つ課題意識を把握するということですね。

 「概要」でアウトラインを、「資料集」で課題意識を把握した後、「本文」を読みます。しかし、本文を頭から読むのではなく、まず終わりの方にある「結論」から読みます。このように読むことで、アウトライン→課題→結論という一連の流れを頭にいれることができます。その後、「本文」を冒頭から読んでいき、必要に応じて「用語集」を参照します。

 これは最初の1,2回程度の読み方であり、全体がある程度頭に入った後は、冒頭から読むか業務等の必要に応じて参照するという形になります。なんにせよ、頭から答申を読むということは、結構な労力を伴うことだと思っています。ここで紹介した読み方が少しでも参考になれば幸いです。

 本文を読まずに内容を把握したいというときは、web上にある当該答申への言及を確認することになります。例えば、高等教育研究室│ベネッセ教育総合研究所私学高等教育研究所 |日本私立大学協会などでしょうか。もちろん、筆者のバイアスが生じている可能性は否定できませんが、当該答申がどのような事を言っているのか簡単に把握することには役立つかもしれません。

 答申の価値とは、第一義的には政策誘導文書である点だと思っています。答申本文は必ずしも全文を審議会委員が書いているわけではなく、基本的には多くの部分を文部科学省担当課の課長の一つ下のクラス(室長、企画官級や課長補佐級)が様々な意見を踏まえ書いていると認識しています。だからこそ、施策に直結する可能性が高いのです。答申を読みその内容に対応した取組を考えるということは、いずれ来る施策に備えるということだと思います。

 答申は、専門家の知識が詰まった成果物ではありますが、正解が書かれているわけではありません。全国の全ての大学にマッチした内容とは限らず、それ故、本文を良く読むと主たるターゲットとしている大学層が透けて見えてくる場合もあります。答申に書かれた課題や結論をうけ、どのように考えるかが大切なのでしょう。だからこそ、答申はあくまで検討の背景として扱い、実際に大学としてどのように対応するかは、十分に当該大学現状を理解した上での検討が必要ですね。