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予算執行調査の理研への指摘事項に思う 〜会計検査院の検査とどこが違うのか〜

STAP問題の理研も無駄遣い…指摘改善されず : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 財務省は1日、2013年度の予算の無駄遣いを点検した結果を公表した。対象の58事業には、STAPスタップ細胞の論文問題を抱える理化学研究所の研究事業も含まれ、検査キットや実験用動物の購入など、物品調達の契約(予算額531億円)の見直しを求めた。まとめ買いのほうが安くなるのに、12年度の随意契約11万6000件のうち、13件しか一括購入していなかった。ノートパソコンは年間238回(4673万円)も購入していた。

 独立行政法人理化学研究所(以下、「理研」という。)の経費執行に関する記事が出ていました。元になった財務省の平成26年度予算執行調査は先日公表されていましたね。

平成26年度予算執行調査の結果を公表します : 財務省

概要

  •  本年度の予算執行調査については、4月1日に事案を公表し、計75件 の調査を実施。
  •  今般、このうち、調査を終了した58件を公表。残る17件については、 引き続き調査を継続し、公表する予定。
  •  調査事案の必要性、有効性、効率性について調査を実施し、事業等の全部又は一部の廃止・統合を含め、今後の改善点、検討の方向性を指摘。 このうち3件の事案については、専門家の知見を活用。
  •  これらの調査結果については、本日、各府省に対し平成27年度概算要求や今後の予算執行に確実に反映するよう要請。

 理研が指摘された箇所は、以下のとおりです。

調査結果及びその分析

 少額随意契約基準以下の物品等について、和光・横浜・神戸事業所(以下、3事業所)の平成24年度における複数事業所や研究室をまたがった一括購入や単価契約の実施状況を確認したところ、平成24年度の少額随意契約件数11万6千件(113億円)に対して、研究材料の購入や機械保守などわずか13件しか行われていなかった。また、3事業所の平成24年度の少額随意契約のうち、年間購入回数が12回以上で購入1回あたりの契約金額が 10万円以上の物品を抽出したところ、41品目あった。その中には、【表1】のとおり、前回調査で例示されている検査キットや国等の機関では通常一括調達されているパソコンも含まれており、前回調査以降、一括調達等が進んでいない状況が確認された。購入計画についても策定されておらず、一括購入や単価契約などを進めるため の取組みが十分ではない状況が認められた。更に、物品の在庫など、管理状況について確認したところ、物品管理事務取扱細則において定めることとしている「仕掛品、 貯蔵品」についての管理規程が未整備となっていた。

今後の改善点・検討の方向性

 少額随意契約基準以下の物品等については、研究計画等を踏まえ、購入総額や購入頻度等を検討した購入計画を作成し、それに基づいた一括購入や単価契約を実施すべき。また、物品の管理状況については、未整備となっている規程を早急に整備するとともに、物品の在庫を購入計画に的確に反映すべき。 

 これに関連して、理研の会計規程等では以下の明記があります。

業務方法書

(契約の方法)

第19条 研究所は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、公告して申込みをさせることにより競争に付するものとする。ただし、予定価格が少額である場合その 他規程で定める場合は、指名競争又は随意契約によることができるものとする。

会計規程

(契約の原則)

第15条 契約担当役及び資金前渡役( 以下「契約担当役等」という。)は、売買、貸借、請負その他の契約を締結しようとする場合においては、一般競争に付さなければならない。

3 契約担当役等は、次の各号の一に該当するときは、前2項の規定にかかわらず随意契約によることができる。

(1)契約の性質又は目的が競争を許さないとき。

(2)緊急の必要により競争に付することができないとき。 (3)競争に付することが不利と認められるとき。

(4)契約に係る予定価額が少額であるとき。

(5)その他業務上特に必要があるとき。

契約事務取扱細則関連部分抜粋

第4章 随意契約

随意契約によることができる場合)

第22条 規程第15条第3項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。

(12) 予定価格が250万円を超えない工事又は物品の製造をさせるとき。

(13) 予定価格が160万円を超えない財産を買い入れるとき。

(14) 予定賃借料の年額又は総額が80万円を超えない物件を借り入れるとき。

(15) 予定価格が50万円を超えない財産を売り払うとき。

(16) 予定賃貸料の年額又は総額が30万円を超えない物件を貸し付けるとき。

(17) 工事、物品の製造、財産の売買及び物件の貸借以外の契約でその予定価格が100万円を超えないものをするとき。

 通常ならば競争入札等になる物品・役務等を随意契約可能な金額まで分けて購入するいわゆる分割発注は会計検査院の検査でもよく指摘されることですが、今回の理研の件はどうもそれとは異なるようにも感じます。個別に購入した238台のPCがそれぞれどのような用途に使用されたのか、仕様や設置場所、発注者、受注者がどのように異なるのかが記事等から不明であるため、是非を言うことができないですね。

 きっと大学教員からは「研究費の使い勝手が〜〜〜」と言われるだろうと想像できます。ただ、このように予算執行の適正化を図っていくということは国税を投入している以上は大切であり、その意味で財務省等職員の方は非常に真っ当に仕事をしたのだろうと思います。独立行政法人である理研としては、財務省等からの要望と研究者からの要望を共に満たしていかなければならないのでしょう。

 特にPCについては、最近の「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」についても、厳格な管理が言われているところですね。

研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)(平成26年2月18日改正):文部科学省

 換金性の高い物品については、競争的資金等で購入したことを明示するほ か、物品の所在が分かるよう記録することなどにより、適切に管理する。特 に、パソコンについては適切に管理することが望ましい。

 なお、通常ならば公的研究費とは科研費等を指しますが、理研ではその範囲を研究所において管理する全ての研究費としていますので、恐らく通常の運営費交付金ガイドラインの対象になるものと思います。

「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」に対する理化学研究所の取り組み | 理化学研究所

公的研究費運営・管理規程

(目的) 第1条 この規程は、独立行政法人理化学研究所(以下「研究所」という。)における公的研究費(研 究所において管理する全ての研究資金をいう。以下同じ。) の運営・管理に関して必要な事項を 定めることにより、公的研究費の適正な取扱いを図ることを目的とする。

(余談ですが、理研には専門的知識・技能等を職員に習得させる制度として大学院修学派遣制度や夜間大学院修学支援制度が設けられており、大変うらやましいです。)

 ところで、この財務省予算執行調査会計検査院の検査は何が違うのでしょうか。同様の疑問を持たれた方もいるようです。(2014-07-01 - 発声練習

会計法

第四十六条  財務大臣は、予算の執行の適正を期するため、各省各庁に対して、収支の実績若しくは見込について報告を徴し、予算の執行状況について実地監査を行い、又は必要に応じ、閣議の決定を経て、予算の執行について必要な指示をなすことができる。

財務省設置法

(所掌事務)

第四条  財務省は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。

八  国の予算の執行に関する報告の徴取、実地監査及び指示に関すること。 

 会計法第46条には予算の執行状況に関する財務大臣の業務が書かれており、恐らくそれに対応する形で財務省設置法第8条第1項第8号に同様の所掌事務が書かれています。会計法第46条をよく見ると、報告を徴す、実地監査を行う、予算の執行について必要な指示をなすの3部分にわけることができます。それぞれが並列関係にあるのではないかと思いますが、各省庁の事業に対し廃止等の指示を出すのは閣議決定を経なければならないと読み取れます。なぜ閣議決定を経るのかは、恐らく、財政法及び会計法により各事業の予算執行は各省各庁の長に責任と権限が与えられているためでしょう。

財政法

第三十一条  予算が成立したときは、内閣は、国会の議決したところに従い、各省各庁の長に対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算、継続費及び国庫債務負担行為を配賦する。

会計法

第十条  各省各庁の長は、その所掌に係る支出負担行為(財政法第三十四条の二第一項 に規定する支出負担行為をいう。以下同じ。) 及び支出に関する事務を管理する。

 ただ、予算執行調査に関する閣議決定がなされた様子が確認できないため、予算執行調査の結果を基にした対応を各省庁に要請したことは、恐らく会計法第46条を根拠とした措置ではなさそうです。

会計検査院法

第二十二条  会計検査院の検査を必要とするものは、左の通りである。
一  国の毎月の収入支出
二  国の所有する現金及び物品並びに国有財産の受払
三  国の債権の得喪又は国債その他の債務の増減
四  日本銀行が国のために取り扱う現金、貴金属及び有価証券の受払
五  国が資本金の二分の一以上を出資している法人の会計
六  法律により特に会計検査院の検査に付するものと定められた会計
第二十三条  会計検査院は、必要と認めるとき又は内閣の請求があるときは、次に掲げる会計経理の検査をすることができる。
一  国の所有又は保管する有価証券又は国の保管する現金及び物品
二  国以外のものが国のために取り扱う現金、物品又は有価証券の受払
三  国が直接又は間接に補助金、奨励金、助成金等を交付し又は貸付金、損失補償等の財政援助を与えているものの会計
四  国が資本金の一部を出資しているものの会計
五  国が資本金を出資したものが更に出資しているものの会計
六  国が借入金の元金又は利子の支払を保証しているものの会計
七  国若しくは前条第五号に規定する法人(以下この号において「国等」という。)の工事その他の役務の請負人若しくは事務若しくは業務の受託者又は国等に対する物品の納入者のその契約に関する会計 

 一方、会計検査院法から、財務省予算執行調査に近そうな業務を選択すると、第22条第1項第5号か第23条第1項第3号でしょうか。各業務にある「会計の検査」「会計経理の検査」が何を指すのかはこの条文だけでははっきりしないと感じています。また、会計検査院事業ベースよりも機関ベースで会計を見ているという印象があり、この点が予算執行調査と異なるのかもしれません。

 このような予算執行調査会計検査院の検査等との違いや法的根拠については、参議院調査室が作成した「立法と調査」第297号に詳しく掲載されています。

立法と調査 297号(平成21年10月1日):参議院ホームページ

予算執行調査の現状と課題

  •  予算執行調査は、予算執行の適正を期し、予算の効率的・効果的執行を行うため、意義あるものであり、今後更なる充実・強化が期待される。予算執行の直接の責任は、それぞれの所管の各省各庁の長にあるが、財務大臣の予算調整権限を下に、事業等の全部又は一部の廃止・統合を含めた見直しを求めたり、事業等の全部又は一部の廃止や目標設定・実施方法等の見直しを求めたりなどして、実質的に次年度以降の予算編成に見直しが行われている。こうした指摘をするためには、確たる法律上の根拠を持つ方が説得力があるのではないか。会計法財務省設置法に位置付けることを検討すべきであろう。
  •  会計検査院総務省が契約に関する検査、調査を行った中で、同時期に財務省はあえて契約に関する調査を行う積極的な理由はあるだろうか。19年度の一般歳出予算は、46兆9,000億円、20年度は47兆2,000億円、21 年度は51兆7,000億円あり、予算執行調査の対象とすべき事業は多方面にわたっている。人員や経費という政府資源の有効活用という点からも、予算執行調査においては、政策評価、行政評価・監視、会計検査等のチェック機能と選定案件・時期について棲み分けが求められるのではなかろうか。

 同報告中では、予算執行調査について、その重要性は認めながらも、法的根拠が明確でないことや会計検査院総務省等が行う検査・調査等との類似性を指摘しています。予算執行調査における各省庁への要請とは、行政指導レベルのお願いということでしょうか。ただ、何にせよ予算編成は財務大臣及び財務省に権限がありますので、従うより他ないと思いますが・・・。