専門学校への支援に思う 〜大学の在り方、職業教育の在り方〜

専修学校生66万人、授業料減免へ…政府検討 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 政府は、全国の専修学校に通う学生を対象に、授業料減免などの経済的支援を行うための検討を始めた。専修学校生は、大学生と比べて経済的に余裕がない家庭の割合が多いことから、安心して学業に専念してもらう狙いがある。2015年度予算の概算要求に関連予算を盛り込む方向だ。

 政府が専修学校に対する支援の検討を行う記事が出ていました。恐らく、文部科学省に設置された「専修学校生への経済的支援の在り方に関する検討会」の開始が関係しているのでしょう。

専修学校生への経済的支援の在り方に関する検討会:文部科学省

 専修学校は、社会の変化に即応した実践的な職業教育により中核的専門人材を養成する教育機関として大きな役割を果たしている。 このような専修学校で学ぶ意欲と能力のある者が、経済的理由に より修学を断念することなく安心して学べるよう、授業料等減免補助事業を含めた経済的支援の在り方について総合的な検討を行う。 この検討に当たり、専修学校生への経済的支援の在り方に関する 有識者による検討会(以下「検討会」という。)を以下のとおり設置する。

 専修学校については、弊BLOGでも言及してきました。その中では、高等教育研究において専門学校は完全に隙間になっていること、国としての支援が乏しいことを指摘したところです。

専門学校に思う 〜高等教育研究の隙間〜 - 大学職員の書き散らかしBLOG

 今回、冒頭記事が出て、少し流れが変わったかなと思っています。

 今年の始めにも、専門学校に関わる記事が出ていました。

KNN scrapbook : 文科省、社会人即戦力育成へ専門学校に認定制度

 社会で即戦力となる人材養成を促すため、文部科学省は2014年度、企業と連携して実践的な実習に取り組む専門学校のカリキュラムを 「職業実践専門課程」(仮称) として認定する制度を始める。専門学校にとっては国の “お墨付き” を得れば生徒を集めやすくなる。同省は認定校に就職率や中退者数などの情報公開を求め、生徒の学校選びにも役立ててもらう。

「職業実践専門課程」の創設について:文部科学省

 職業に必要な実践的かつ専門的な能力を育成することを目的として専攻分野における実務に関する 知識、技術及び技能について組織的な教育を行うもの(以下「職業実践専門課程」という。)を文部科学大臣が認定して奨励することにより、専修学校専門課程における職業教育の水準の維持向上 を図ることを目的とする。

 高度な職業教育を行う課程を認定するということですね。現時点でも結構な数の課程が認定されています。(全体数から見るとごく一部でしょうが。。。)

 このような専修学校を巡る一連の流れは、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(平成23年1月中教審答申)から始まっていると認識しています。

「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申):文部科学省

 特に、その中にある新しい学校種に関する提言は、あまり大きなニュースになりませんでしたが、非常に注目しているところです。

  • 上述のような、現在の高等教育における職業教育の位置づけや課題、また実践的な知識・技能を有する人材の育成ニーズや高等教育機関が職業教育において果たす役割への期待の高まりを踏まえると、高等教育における職業教育を充実させるための方策の一つとして、職業実践的な教育のための新たな枠組みを整備することが考えられる。具体的には、卓越した又は熟達した実務経験を主な基盤として実践的な知識・技術等を教授するための教員資格、教員組織、教育内容、教育方法等や、その質を担保する仕組みを具備した、新たな枠組みを制度化し、その振興を図ることである。(P82)
  • このような職業実践的な教育に特化した枠組み(以下「新たな枠組み」という。)が適切に整備されていくことは、各高等教育機関特性に応じた職業教育の充実を促し、これまで発展してきた大学・短期大学・高等専門学校、専門学校の教育とあいまって、高等教育機関全体として、職業教育システムを構築・充実していくための契機となることが期待される。(P82)

 OECD閣僚理事会での総理大臣基調演説においても、この仕組みと関連がありそうな言及もあったところです。

平成26年5月6日 OECD閣僚理事会 安倍内閣総理大臣基調演説 | 平成26年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

 日本では、みんな横並び、単線型の教育ばかりを行ってきました。小学校6年、中学校3年、高校3年の後、理系学生の半分以上が、工学部の研究室に入る。こればかりを繰り返してきたのです。しかし、そうしたモノカルチャー型の高等教育では、斬新な発想は生まれません。だからこそ、私は、教育改革を進めています。学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています。

 少しわかりにくい文脈ですが、職業教育に関する新たな枠組みを高等教育の中に取り込むとあります。直前まで大学の例えが言及されているためわかりにくいですが、言うまでもなく、高等教育とは大学、短大、高等専門学校、専門学校を含むものと理解できます。なお、OECDでも利用されているUNESCOのInternational Standard Classification of Education: ISCEDによれば、専門学校は大学や短大、高等専門学校と同じくTertiary Typeに分類されています。(厳密に言えば、学士号を授与する大学をTertiary TypeA、短大や専修学校をTertiary TypeBとしています。)

 個人的には、このような教育の複線化の流れは賛成です。工業高校などの専門高校も含め、日本の職業教育は(誤解を恐れずに言えば)格下に見られていた部分があると感じています。それを打破し高度な専門教育を行う機関を定着させることは、学校教育のみならず社会人教育にも貢献することになり、社会全体に貢献することだと思っています。

 元々、教員養成や医師養成など所謂免許学部は専門学校からスタートしているわけです。では、複数の学部が集まった大学であり続ける理由はどのようなものなのでしょうか。免許学部こそ、既存の大学から独立して専門学校化しても良いのかもしれません。最近のガバナンスの議論を見ていると、教授会自治など教員の同僚性による大学運営を前提とすると、各学部が単科大学として独立する方が良いのではないかと思っています。ただ、少なくとも免許学部以外の学部にとっては、良い結果にならない気がしていますが。