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国立大学の正社員就職率に思う 〜大学特性による傾向〜

大学一般

「正社員率」で一橋大超えも 地方国立大の実力 〈週刊朝日〉-朝日新聞出版|dot.(ドット)

 地方国公立大の就職の「実力」を調べるため、本誌は全国の国公立大にアンケートを実施した。有効な回答があった地方の国公立大55校のデータを分析して、「正社員就職者数」の卒業生に占める割合、「正社員率」でランキングにした。すると、秋田の国際教養大は90%を超える正社員率で、週刊朝日2月21日号で紹介した「著名400社就職率ランキング」(大学通信調べ)でトップだった一橋大を上回った。国際教養大だけでなく、富山県立大、九州工業大、帯広畜産大など9位までの地方国公立大で、卒業生の8割以上が正社員になっていた。

 地方国立大学の就職率に関する記事が出ていました。特に、正社員(あまり好きな言葉ではありませんが。。。)の就職率のようですね。就職率というのは非常にわかりやすい学修成果の指標の一つでもありますし、気になるところです。

 卒業後の状況調査といえば、学校基本調査が真っ先に思い浮かびます。ただ、学校基本調査は各都道府県ごとに数値が算出されているため、各大学の実態を図ることは難しいというのは以前幣BLOG記事(都道府県別国立大学の入学者数に思う 〜逃げられている国立大学はどこか〜 - 大学職員の書き散らかしBLOG)でも触れています。しかし、平成26年度からの大学ポートレート本格稼働を見越して、国公立大学の機関毎の基礎的な情報はすでに公表されています。

大学基本情報

 大学ポートレート(仮称)は、国公私立大学を通じた情報発信の仕組みとして平成26年度中に本格稼働することを目指して現在大学ポートレート(仮称)準備委員会において審議を進めています。ここでは、本機構による情報発信の試行的取組として、平成24年度の国公立大学の基礎的な情報(注)について掲載しております。

(注)当該情報は、各大学の任意の協力により、本機構への提供を受けたものであり、公立大学の情報の収集提供については、公立大学協会の協力を受けています。

 今回は、これら基礎的な情報の中から、卒業後の状況(大学、状況別卒業者数(進学、就職等))を基に、冒頭記事中にある国立大学の正社員就職率を見てみます。

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 図1に、各国立大学の大学ごとの「卒業生に占める正規職員・従業員、自営業主等の割合」及び「進学者、臨床研修医、学校等入学予定者を除く卒業生に占める正規就職者・従業員、自営業主等の割合」(以下、「両割合」と言う。)を示します。なお、夜間主のデータを除き、昼間のみのデータで処理してあります。また、図2に、両割合の散布図を示します。

 図1から、両割合の差が各大学によって異なることがわかります。これは、進学者や臨床研修医予定者が各大学の特性により異なるために生じていると考えます。浜松医科大学や滋賀医科大学などを見ると、分母に臨床研修医予定者を含んだ青棒ではそれほど高くないものの、分母に臨床研修医予定者を含まず医師養成を除いて考えた緑棒では高い値になっています。また、青棒30%以下で緑棒が高い大学は、以下の通りです。

学名卒業生に占める正規職員・従業員、自営業主等の割合進学者、臨床研修医、学校等入学予定者を除く卒業生に占める正規就職者・従業員、自営業主等の割合
東京工業大学 8.8% 69.1%
長岡技術科学大学 10.3% 79.0%
豊橋技術科学大学 10.7% 77.8%
京都工芸繊維大学 21.4% 72.8%
東京農工大学 25.3% 82.7%
名古屋工業大学 29.7% 90.1%
電気通信大学 29.8% 84.3%

 技術科学大学や工業系単科大学あるいはそれに準ずる大学であり、大学院等への進学率が高めなのだろうことは想像に難くありません。

 緑棒の低い割合に教育単科大学が多いのは、教員採用試験の合格を狙っている者がいるからでしょうね。法学部等を持つ一部の大学では、法科大学院に進学せずに予備試験攻略を狙い自学する者がいるために、緑棒の割合が低くなっている可能性もあります。

 しかし、図1や図2を見ても、東京芸術大学は際立っていますね。元データを参照してみます。

学名進学者就職者:正規の職員・従業員、自営業主等就職者:正規の職員等でない者専修学校・外国の学校等入学者一時的な仕事に就いた者進学準備中の者就職準備中の者その他不詳・死亡の者卒業生に占める正規職員・従業員、自営業種等の割合進学者、臨床研修医、学校等入学予定者を除く卒業生に占める正規就職者・従業員、自営業主等の割合
東京芸術大学 206 38 0 5 10 44 35 48 81 8.1% 14.8%

 まず、そもそも「不詳・死亡の者」数が多く、捕捉率が高くないことがわかります。芸術系単科大学という大学の特性がよく表れているなという印象です。

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 図3に、国立大学の各学部における両割合を散布図で示します。こちらも、夜間主のデータは除いてあります。図3を見ると、プロットがかなりばらけており、学部により状況が大きく異なることがわかります。分野ごとに見れば、何かしらの傾向が表れそうですが、それはまたの機会に。

 ここまで見てたように、単に「就職率」と言っても、分母分子に何を採用するかによって大きく値が変化します。文部科学省は、平成25年末に通知を出し、就職率を以下の通り定めました。

文部科学省における大学等卒業者の「就職率」の取扱いについて(通知):文部科学省

文部科学省における「就職率」の取扱いについて

1・「就職率」については、就職希望者に占める就職者の割合をいい、調査時点における就職者数を就職希望者で除したものとする。

2.「就職率」における「就職者」とは、正規の職員(1年以上の非正規の職員として就職した者を含む)として最終的に就職した者(企業等から採用通知などが出された者)をいう。

3.「就職率」における「就職希望者」とは、卒業年度中に就職活動を行い、大学等卒業後速やかに就職することを希望する者をいい、卒業後の進路として「進学」「自営業」「家事手伝い」「留年」「資格取得」などを希望する者は含まない。

4.「就職率」の調査時点は、「4月1日現在」とする。

 今回お示しした図の算出式とも少し異なりますね。

  なんにせよ、このように具体的な数値が明らかになると、大学間のベンチマークも容易になりますので、今後ともこのような基礎データの公開を進めていってほしいと思っています。大学ポートレートにおいても、もっとわかりやすい形でたくさんの大学の現状が示され、受験生や国民に役に立ち大学の良さがアピールできるようなシステムになってほしいですね。