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学校法人の解散命令等に向けた在り方に思う 〜撤退ルートが見えてきた〜

大学一般

パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

 これを踏まえ 解散命令等に係る所轄庁による一連の対応の過程を改めて検証した上で現行法における制度上の課題及び考えられる今後の対応の在り方について検討した内容を、ここに整理したものである。

 大学設置・学校法人審議会学校法人分科会が策定した「解散命令等に係る課題を踏まえた今後の対応の在り方について」に関して、意見募集の実施が行われています。意見受付締め切り日は平成26年1月24日です。

 大学設置・学校法人審議会学校法人分科会においては、平成24年10月に、著しく重大な問題を抱え、今後の改善の見通しが立たない状況にあった学校法人に関し、文部科学大臣が当該学校法人に解散を命ずることが適当である旨の答申を行った。(P1)

とありますが、これは言うまでもなく、学校法人堀越学園のことです。当時はだいぶニュースになったことを覚えています。

堀越学園(群馬県)の在学生と保護者の皆様へ:文部科学省

 このたび、文部科学省は、大変遺憾ながら、私立学校法(昭和24年法律第270号)第62条の規定に基づき、学校法人堀越学園に対して、平成24年度末までに解散命令を行うこととしました。これに伴い、同法人が設置している大学、専門学校、幼稚園に在学する皆様が、今後、他校での修学を希望する場合、できる限りの支援を行うこととしました。

(中)堀越学園解散命令 : 学園解散 : 企画・連載 : 群馬 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

創造学園大学など運営の堀越学園が破産 - ライブドアニュース

堀越学園元理事長ら逮捕 虚偽の抵当権設定の疑い 群馬県警 - MSN産経ニュース

 この事例を踏まえ、より良い指導の在り方を検討し、今回の意見募集に至ったのでしょう。

 内容を確認する限り、解散までのプロセスをより明確化させたものであると感じました。本文中何度も出てくる「行政指導」については、行政手続法第三十二条にあるとおり、任意の協力によって実現されるものです。そのため、法的拘束力は一切ありません。また、行政指導に従わなかったことを理由に相手方に不利益な扱いをしてはいけないことになっています。つまり、無視しようと思えば無視できるということです。ただし、各大学においては、極力有象無象の行政指導に従うのが常だと感じています。なお、法人の解散は法令に定める「命令」であり、行政指導と全く異なるものです。

行政手続法(平成五年十一月十二日法律第八十八号)

第四章 行政指導

(行政指導の一般原則)

第三十二条  行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。

2  行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。 

 また、学校法人が解散等した後の学籍簿の扱いについて、学生等の生涯にわたるキャリア形成を図る上で適切に管理されることが重要であることから、適切に引き継がれ管理がなされるようにすることが求められる。(P7)

については、他BLOGでも言及されているとおり、(独)大学評価/学位授与機構が引き受けるようです。

文部科学省が破綻した大学の学籍簿の管理及び証明書発行の業務を大学評価・学位授与機構へ移管 - Clear Consideration(大学職員の教育分析)

 二点ほど気になった点があります。

 このことから、重大な問題が生じている場合には、その的確かつ効果的な解決を図るため、解散命令を発出する段階までの間に、改善等のための措置を命ずることを可能とすることが必要である。(P5)

 「重大な問題が生じている場合」において、所管庁がその問題の解決を図るということがどこまで可能なのかは疑問です。例えば、運営資金がない法人に対し、融資先等を紹介することは難しいところもあるでしょう。もちろん、記述はあっても良いと思いますし、(なかなか想像できないですが)課題が解決する場合もあるかもしれません。ただ、本資料の趣旨は、あくまで解散までの流れを整理したことだと思いますし、付け足し程度の文章かなという印象です。

 在校生の転学等が円滑に行われるため、私学関係者等の協力により進めていく仕組みを整えるとともに、転学等を終えるまでの間、教育の提供を可能にする観点から、当該学校法人に当面の運営資金を供給するため、一定の金額をあらかじめ蓄積しておく制度を設けることなどにより必要な資金を確保する方策を講じること。(P7)

 この「備蓄する」主体がどこなのかは、本文中からは読み取れませんでした。「重大な問題が生じている」法人に資金備蓄などは不可能でしょうから、私学団体がその役割を担うのかなという印象です。

日本私立学校振興・共済事業団(私学振興事業本部)

私学の自主的な撤退に当たっての留意事項 

 今回の「私立学校運営の手引き−第4巻−『私学の自主的な撤退に当たっての留意事項』」では、不採算部門の縮小・廃止を行う「撤退」を選択せざるを得ない場合の取組に資するため、日本私立学校振興・共済事業団(以下、「私学事業団」という。)におけるこれまでの経営相談等の経験から、大学等の学生募集停止の決定から実施、その後の大学等の廃止や学校法人の解散までの手順の参考例を取りまとめたものです。

「大学改革実行プラン」について:文部科学省

大学改革実行プラン

大学の質保証の徹底推進 【私立大学の質保証の徹底推進と確立(教学・経営の両面から)】

・法令違反等、教学上問題がある大学に対しては、改善勧告・改善命令・組織廃止命令(学校教育法

・経営改善の見込みがなく、教育の継続に悪影響を及ぼす学校法人に対しては、役員解職勧告・解散命令(私立学校法

・社会変化に適応できない大学等の退場

 平成23年に公表された日本私立学校振興・共済事業団「私立学校運営の手引き−第4巻−」では、「私学の自主的な撤退に当たっての留意事項 」として、廃止までの手順が紹介されています。また、平成24年に公表された「大学改革実行プラン」では、大学の質保証の一貫として私立大学の解散が明記されています。今回の資料と併せ、私立大学の撤退ルートが着実に作られつつあると感じています。なお、改めてプランの内容を確認し、私立大学の撤退が大学の質保証の一部とされていることに衝撃を受けました

 「市場は間違えない。」という言葉あります。大学設置基準が大綱化され大学参入障壁が下がった際、市場の選択により不良な大学は自然淘汰されるだろうと考えられていたことは容易に想像がつきます。結果、私立大学の数は1.5倍以上増えましたが、自然淘汰が行われているとは言い難い状況なのは皆さんが同意するところでしょう。市場が間違えないのは、消費者がその善し悪しを判断し、もっと良いものがある場合にすぐに悪いものから離れていくという「前提」に立ってのことだと思います。しかし、大学の場合、事前の質判断や転学が容易にできず、「前提」の効力が薄れると考えます。さらに、このような状況が1年ごとに再生産されている上4年間は継続するという大学の特性のため、市場における自然淘汰とはほど遠いのでしょう。

 設置者にとっては、学校法人に対してかなりの税制優遇措置があることもありそもそも大学を保有しているだけで得であるため、それら税制や授業料等ベネフィットと教育費用等コストのバランスの上で、存続と解散の損益分岐点による経営判断が行われるとも考えられます。

私立学校関係税制:文部科学省

 教職員の側に立つと、例え学生募集を停止し4年後には解散となるとしても、少なくとも4年間は教育水準や事務処理等を一定程度維持しなければならず、そうとう辛い状況があることは想像に難くありません。少なくとも私は、そのような状況におかれると想像するだけで寒気がします。

 部外者である私がちょっと考えただけでこれだけ出るのですから、様々な理由により学校法人の解散や大学の閉学は困難であることは言うまでもありません。そんな中、文部科学省や大学設置・学校法人審議会がなんとか筋道をつけようとしています。果たして大量閉学時代が訪れるのか、案外今と変わらない状況なのか、今後状況がどうなるかは全く想像ができません。