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総務省の科研費勧告に思う 〜返還することで損をするのは誰なのか〜

総務省|科学研究費補助金等の適正な使用の確保に関する行政評価・監視 <調査結果に基づく勧告>

 この行政評価・監視は、以上のような状況を踏まえ、科研費等の適正な使用を確保する観点から、研究費の不正使用防止に向けた体制の構築状況、研究費使用ルールの運用状況等を調査し、関係行政の改善に資するために実施したものである。 

 総務省行政評価局による科研費等の使用状況に関する報告書が公表されました。かなり細かく各大学の取組状況がわかるのはすごいなと思いつつ、実際のところ各大学に対しかなりの調査依頼があったのでしょう。各大学担当者の苦労が知れるもになっています。

 ざっと読んでみたところ、「図表II-1-(2)-ア-7 科研費等の不正使用防止に関する意識向上を中心とした研修や説明会を実施している 21 大学」の受講率は大学によりかなりの差があり、おもしろいなと思いました。北海道大学の受講率5.7%や九州大学の8.8%はなんとも言えない数値です。そんな中、気になったのは以下の指摘。

 文部科学省は、科研費の効果的かつ計画的な執行を確保し、無駄な使用を防止する観点から、次の措置を講ずる必要がある。 

 研究費を返還することにより、以後の科研費の審査において不利益が生じないことについて、研究機関使用ルール、研究者使用ルールなどに明記すること。その上で、研究機関に対し、繰越制度や調整金制度を活用しつつ、研究費が計画的に執行されるよう管理を徹底させること。 また、研究機関に対し、上記の制度を活用してもなお研究期間終了の一定程度前の時点において研究費に残額が生じる余地があるとみられる場合は、その後の研究者の発注申請の適切性について事務局が厳正に判断するなど事務局がその責任の下で研究費を厳格に管理する体制において、無駄に使い切ることなく、配分機関に返還することを徹底させること。

 端的に言うと、年度内に使い切れないからといって研究費をムダに使うよりは、返還しなさいということですね。実際、科研費は返還することができます。

科研費FAQ | 科学研究費助成事業|日本学術振興会

【Q4309】 研究が終了しても研究費に残額がある場合にはどうしたらよいでしょうか?

【A】当初予定した研究を完了しても研究費に残額が生じた場合には、無理に使うのではなく返還していただいて構いません。残額が生じたことで、以後の科研費の審査において不利益が生じるようなことは一切ありません。返還については、額の確定後に手続きを行っていただきます。

 「研究費を返還することにより、以後の科研費の審査において不利益が生じない」というのは事実でしょう。というよりも、膨大な申請数に対し、わざわざ研究代表者の過去の研究費使用情報を確認することは、かなり困難だと想像できます。

 確かに「研究者個人」には不利になりません。しかし、研究費を配分している機関である文部科学省日本学術振興会にとっては、返還金が一定程度以上になると事業のムダを指摘される事態にもなりかねませんし、その結果科研費の総額が削られ採択件数が減少し、結果的に研究者個人の機会損失になる可能性もあります。また、直接経費の返還に併せ間接経費も返還することになりますので、大学にとっては痛手かもしれません。

 と言っても、なにが何でも使い切れと言っているのではありません。必要に応じて返還することは、経費の有効活用の観点からも大切なことだと思っています。しかし、総務省としてそのあたりの配分機関的な事情をどのように考えているのかは気になります。

 なんにせよ、研究費の成果ではなくその使い方の方が興味があるのではないかと思わせるような報告書だというのが、私の印象です。成果は自分たち官僚には判断できないと考え、その使い方について費用対効果や実施コストを考えずに指摘しているのでしょうね。