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経費の不正使用?に思う 〜2つのミスリード〜

不正経理:山形大工学部、余剰金をプールし転用- 毎日jp(毎日新聞)

 山形大工学部(山形県米沢市)が、国に単年度決算を義務付けられている教育研究活動費について、使い切れなかった分はプールし、施設維持・管理費などに転用していたことが大学関係者への取材で分かった。 

 毎日新聞で山形大学工学部がプール金という不適切な経費使用をしているという報道がありました。毎日新聞のみが報道しているところから見ると、所謂すっぱ抜きかもしれません。ここまでなら、「また不祥事か・・・」と思うところですが、山形大学はこの報道に対し事実に反していると報道発表を行います。

本日発行の毎日新聞の本学に関する記事について(11/5)|山形大学

 本日(平成25年11月5日)付けの毎日新聞(社会面)で報道された「山形大工学部で不正経理」と題する記事は、事実に反しております。このため、本日、午後3時から記者会見を行い、下記のとおり説明するとともに、毎日新聞社に抗議を行ったところですが、本学の経理は、法律や関係規則に則り適正に執行されており、問題はないものと認識しております。工学部で行われていた予算の調整は、学部内の予算運用の話であり、予算執行上の不正経理とは全く別のものであります。しかし、学部の予算管理の柔軟性を欠くことになる恐れがあるため、是正を指導したところです。 

 確かに、私自身記事に違和感を覚えていたところで、大学側の説明の方が良く理解できます。よく記事を読むと、当該報道記事には2つのミスリードがあると感じています。

 一つ目は、大学側の言うとおり、「プール」という言葉の使い方についてです。自分自身の整理のために、新聞の報道と大学の発表の違いを図にしてみました。なお、話を簡略化するため、当年予算額と次年予算額を同一にするとともに、当年と次年の教員経費と運営経費の額を同一にし、次年に同額を繰り越すという条件にしています。f:id:samidaretaro:20131106225227p:plain

 図1は一般に言われるプール金を示した図です。年度内に執行できなかった金額を、さも執行したかのようにして現金等を別に保管、所謂「裏金」化し、次年度以降に通常経費とは別に使用しています。これは明らかに経費の不正使用と言え、同様のケースは不祥事として多数報告されていることは、皆さんも目にしたことがあると思います。当該報道記事を見る限り、このような不正使用が行われているという意味にも取れます。

 図2は大学側の説明を基に私が作成した図です。工学部内の経費配分の問題であることがわかります。ただ、確かに図2のような方法を続ければ、いずれ運営経費が圧迫されることが予想でき、「予算管理を柔軟性を欠くため、是正を指導した」という大学側の対応も理解できます。

 1つ目のミスリードは、報道側がこのような事情を理解していなかったため生じたものと思われます。

 2つ目は、報道記事中の以下の部分です。

 工学部によると、教育研究活動費は文部科学省が大学運営のために渡す「運営費交付金」から支出され、工学部の教員約200人に1人あたり年平均200万円配分している。工学部の年間予算約12億円のうち約4億円を占める。同省は2010年10月、年度をまたぐ積み立てにより次年度以降の使途が不明朗になる弊害があるとして、国立大学法人に対し単年度決算を徹底するよう文書で指導していた。

 「2010年10月の文書による指導」とは、会計検査院の指摘を受けて文部科学省が各国立大学法人へ通知した「決算剰余金の翌事業年度への繰り越しについて(平成22年12月24日事務連絡)」のことと思われます。関連資料は、国立大学法人分科会業務及び財務等審議専門部会(第26回)の資料3にまとめられています。

国立大学法人分科会 業務及び財務等審議専門部会(第26回) 配付資料:文部科学省

会計検査院からの指摘)

資料4-2 国立大学法人における目的積立金の取扱いについて:文部科学省

 ここでは、会計検査院から文部科学大臣へ、独立行政法人通則法第44条に定める「文部科学大臣の承認を受けた額について、国立大学法人が作成した中期計画に定める剰余金の使途に充てるための積立金(目的積立金)」について、その計上や使途が適切ではないと指摘しています。会計検査院がこのような指摘を行ったことは、当時の新聞でも報道されました。

:日本経済新聞(国立大学の積立金の使途に基準を 会計検査院文科省に)

 この指摘を受け、文部科学省高等教育局国立大学法人支援課から各国立大学法人財務担当部課長へ、目的積立金及び積立金について、より明確な取り扱いを示すとともに、実際に決算書類の附属明細書の様式を変更する旨の通知を行いました。

 つまり、「単年度決算を徹底するよう文書で指導」というのは、適切な表現でありません。2つ目のミスリードは、国立大学法人会計基準の複雑さのため生じたと考えられます。

 今回のケースでは山形大学がすぐさま適切な対応をしたという印象が強いです。このように、その都度報道の認識と大学の認識を埋めていくことは、今後とも必要になってくるでしょう。