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卒業認定厳格化に思う ~考えないといけない4つのこと~

大学一般

東京新聞:大学の卒業認定厳格化へ 留年増でも補助金減額せず:話題のニュース(TOKYO Web)

  政府の教育再生実行会議は29日、留年する学生が増えて定員を超過した場合、大学への補助金などが減額される現在の制度を緩和するよう提言する方針を固めた。成績の悪い学生でも留年させにくいという現状を改め、大学の卒業認定を厳しくするよう促して「出口管理」を強めるのが狙い。「入学しにくく、卒業しやすい」と指摘される日本の大学の在り方を見直し、知識偏重の入試を変えると同時に、大学生の学習量を増加させることを目指す。

  昔から「日本の大学は入学しにくく卒業しやすい」と言われてきました。例えば、OECDの2004年調査では、30カ国平均の卒業率が70%に対し日本は91%だったようですし、読売新聞が2008年に行った調査では卒業率が84.6%だったようです。なお、両調査とも、調査結果原典に当たれませんでしたので、「卒業率」の明確な定義は明らかではありません。必ずしも、標準修業年限内卒業率のことではなさそうですが。。。ちなみに、1976年入学者では最低修業年限卒業率は76.1%だったようです。

「我が国の教育水準」(昭和55年度)[第1章 第2節 5 (6)]

 そんな中、教育再生実行会議は「出口管理」を強めるために、留年に関する制限を緩和する提言を行うようです。

 記事中、「定員を超過した場合、大学への補助金などが減額される現在の制度を緩和するよう提言する」とあります。この制度とは、簡単に言うと、在籍学生数の過少や超過具合により、補助する金額を減額しますよ、ということです。文部科学省が公表している「定員超過・定員割れに関する取扱いの概要」がありますが、古い資料なので現在の状況は明確にはわかりません。最新の「私立大学等経常費補助金取扱要領」を確認すると、少し取扱い状況が異なるようです。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/08121809/004.pdf

日本私立学校振興・共済事業団(私学振興事業本部)

 なお、「定員」と言う場合、「入学定員」と「収容定員」の2種類があり、「入定」「収定」と言ったりもします。新聞記事などで「定員充足率が~~~」となっている場合、入定を指すことが多いのですが、この提言の場合は収定のようですね。実は、入定に比べ収定はあまり議論になることがなく、このような形で議論の俎上に載せるのは、少し驚きでもあります。

 私は、基本的にはこの提言に賛成です。厳格な成績評価を行う場合、最終的には学生一人一人の状況を判断することになり、学生現員など数的な問題が発生します。その問題の基となっている制限を緩和しましょうというのが、今回の提言の趣旨でしょう。しかし、緩和する場合、行政側大学側企業側ともいくつか考えないといけない点もあると思っています。
1.設備面
 在籍者が増えるということは、単純に設備の問題が発生します。今回の提言は、恐らく教養教育等講義での成績評価を意識したものではないかと思います。その場合、例えば教室のキャパシティなども問題になるかもしれません。e-learingも活用しながらクリアしていく必要があるでしょう。
2.認証評価基準
 大学機関別認証評価の大学評価基準では、入学定員や収容定員の状況も確認することとなっています。例えば、高等教育評価機構では、「学科の収容定員超過について、1.3 倍以上の場合は、原則「改善を要する点」として指摘し、公表する。」となっています。大学基準協会大学評価・学位授与機構の評価書でも、収容定員について言及があります。さらに、前述の設備面についても、大学評価基準の観点に含まれています。このあたりとの関係も検討が必要でしょう。
3.就職活動
 留年をしても就職活動の際に直ちに不利にならないように配慮が必要でしょう。大学での学修状況を、現在よりも選抜の参考にしてくれれば良いなと思っています。
4.成績評価の透明化
 「正当な留年」であることを学生に認識させるためにも、各科目における成績評価をより透明化する必要があります。こうすることで、学生からの異議申立等にも正しく対応できるとともに、不当に留年を増やして授業料を確保しようという大学側の恣意的運用も押さえられるのではないでしょうか。

 大学側にとっては、特に4番目が最も大切という認識です。成績分布の公表やシラバスの統一など、いろいろ手法はあると思いますので、全学的に推進していく必要があるでしょう。なんにせよ、教育再生実行会議にしては良い提言だと思っています。直接的に「出口管理」つまり学修成果の定着に繋がるかどうかはわからない部分があるにしろ、是非ともこの方向で進めていってほしいところです。