「ニッポンのジレンマ "救国"の大学論」を見て思う

NHK 新世代が解く!ニッポンのジレンマ | 過去の放送

 大学のお話でよくありそうな「今の大学生は〜〜〜」や「欧米の大学では〜〜〜」といったお話ではなく、教育全般に関するトークが大部分であり、良い意味で裏切られました。逆に言えば、「大学論」っていう感じではなかったですね。

 印象に残ったのはMOOCsのお話。バングラディシュで国No.1教師のビデオ教材を見せたところ半月で皆飽きて教室に来なくなったという経験からロールモデルが目の前にいる上でコンテンツを整備する必要があることがわかったという話は興味深かったです。また、MOOCsのコース修了率が1割程度という話も含め、オンライン学習において学習者がその動機を失い履修を放棄するということはどのように考えれば良いのか、生涯学習と学校学習との違いに似ているなと思いながら見ていました。

 前述のとおり今回はあまり大学大学したお話はなかったのですが、それにしても全国で800近くある4年制大学を一括りにして議論することはもう止めにしませんか、と思っています。今回の出演者の出身大学・大学院を見るとかなり上位に位置していますが、その人たちから語られる教育論は非常に理想的で耳あたりが良く、その教育論を実行する教育者学習者とも善人というイメージを持ちました。一方で、番組中古市さんが「階層化」と言ったとおり、終期中等教育と言えるような4年制大学も世の中には存在しており、そのような大学にとっては今回話された教育論はもしかしたら机上の空論なのかもしれません。もちろん、そのような大学も各大学の目指すところに向かって努力しており、それは称賛されることだと思いますが。

 人は誰もが教育を経験しているため教育評論家になりがちですが、自分が受けてきた以外の教育のことを考えるのは恐ろしく発想が貧困になってしまいます。教育業界にいる私もそうです。どの程度一般化するか具体化するかのバランスの中で、無用なレッテル付けをせずにどのような切り口で大学を語れば良いのか。大学の多様化・機能別分化が進んでいる中でしっかりと考えていかないといけないと改めて思いました。