大学事務職員は誰にでもできる仕事です。

 巷には「大学職員論」(この場合、大抵は大学事務職員を指します。)なるものがあり、大学職員とは何か、どのような存在かについて、喧々諤々議論する世界があると聞いています。それはそれで結構ですが、たまに大学職員はいかにも崇高なる存在みたいな感じの論調を見ることがあり、違和感を持ちます。いやいや、大学事務職員は基本的には誰でもできる職業・仕事でしょう。

 私は、世の中の仕事の少なくない部分が、個人の素養や資質などは関係するでしょうが、トレーニングを積めば誰にでもできる職業だと考えています。就活やハローワークなど、就職への機会が開かれているということは、その証左の一つでしょう。大学職員も例外ではなく、特に国立大学法人職員の採用の大部分は公務員と同様の形になっています。申し込みにはある程度条件があるとはいえ、逆にいえば、それをクリアした人は誰でも仕事ができる対象となり得るということです(ただ、誰にでもできる仕事ではありますが、誰でも採用するというわけではありませんね)。

 このことは、大学職員の仕事を「処理」するだけならば誰でもできることを指しているんだろうなと思います。規則やマニュアルに従い、前例を踏まえ、ある程度機械的に対応するという感じでしょうか。基本的には、大学職員の誰もがこの段階から始めるのでしょうね。

 ただ、この段階で停滞しているのでは、学生のためにも教員のためにも組織のためにも、何よりも自分自身のためにもならないのではないか、と私は思っています。あくまでスタート時点の話であり、そこから先は自分自身が職業人として自律していくことが必要でしょう。様々な仕事の中に自分の判断・オリジナリティを発揮し、それを皆ができるように昇華していくことが求められていると感じています。このあたりの話は、以前にも弊BLOGにて言及してきました。

処理だけではなく判断をすること - 大学職員の書き散らかしBLOG

1年目で仕事を覚えて・・・では遅すぎる。 - 大学職員の書き散らかしBLOG

「自分にしかできないこと」から「みんなにもできること」へ。 - 大学職員の書き散らかしBLOG

 冒頭の「大学職員論」についても、入職後の自律に向けた一つの指針としてはあり得るとは思っていますが、大学職員になるにはこういう人以外には難しいみたいな感じにはなってほしくないですね。

仕事を断ることができるか。

   働き方改革の影響もあり、超過勤務時間削減や業務方法改変などに取り組んでいます。そんな中、学内外問わずいろんなところからいろんな依頼をされるわけですが、最近考えるのはこの仕事は断ることができるのかと言うことです。特に、学内からの依頼ならともかく、学外から唐突に来る調査いわゆる「調査もの」は、様々な仕事があるなかでストレスの要因となり得ます。

   基幹統計(旧統計法での指定統計)には回答義務がありますが、それ以外の調査ものは基本的には任意の回答のはずです。つまり、回答義務はないものにどこまで回答するのか、という問題が生じます。そもそも、大学に一銭の利益も入らないのになぜ回答しなければならないのでしょうか。ということで、最近では調査ものを素直に回答するのではなく、回答すべきかどうかをまず判断するようにしています。

   判断の際の基準は、だいたい以下の感じです。

  1. 調査元との関係はどのようなものか
  2. 回答を行わないことで調査元との関係は変化するか
  3. 調査票の語句や内容は十分に理解でき、整合性のとれたものとなっているか
  4. 回答すべき内容が想像できるか
  5. 回答の裏付けは既存の資料にありそうか
  6. 回答に要する学内手続きはどのようなものか
  7. 締め切り日の一週間前に回答原案を作成できるか(調査に関する問い合わせを行う必要が想定される場合は、それを踏まえ検討する)
  8. 回答を行うことで本学にどのようなメリットがあるか
  9. 回答を行わないことで本学にどのようなリスクがあるか

   これらをパッと頭の中で考え、総合的に判断して回答するかを検討します。その結果は、私の判断で回答の可否を決められるところもあるのですが、ちょろっと上司に話しておきます。(このあたりは、日頃の上司との関係性にも寄るかもしれません)

   例えば、文科省からの説明会出席者調査は明らかに本学にメリットがあるため回答しますし、大学ランキングに反映される新聞社の調査は(色々思うところがあるものの)回答した方が無難ですね。また、要項に書かれていなかった回答の取りまとめ結果送付を個別に約束して、調査に回答したこともあります。一方、明らかに内容と回答期間がマッチしていないものや他業務が繁忙期であり回答作成に回すマンパワーがない場合などは、申し訳ないのですが回答していないものもあります。

   仕事を断ることが良いと言うのではなく、部署全体、大学全体の業務量、業務時間の適切化が重要です。そのため、私が断ったとしても学内の他者にその仕事が回るようでは、あまり意味がないと考えています。その点では、外部からの依頼は非常に"断りやすい"仕事であるとも言えます。また、回答に労力を要する調査であっても、その課程において新たな事実や課題が発見されることもあり、一概に調査ものがいけないと考えているわけではありません。

   ただ、逆に言えば、自分が誰かに仕事を依頼するときは、背景の説明や調査票の作成など十分に留意しなければならないと感じています。相手の時間を奪う以上は、こちらもそれ相応の準備をしなければならないということですね。

沖縄科学技術大学院大学に行ってきました。

https://www.oist.jp/ja   

   所用により、沖縄科学技術大学院大学(OIST)に行ってきました。そこで見たOISTが素晴らしい環境だったので、今回はその紹介です。

   建物全景模型を前面から。木々を縫うように建物が配置されていることがわかります。

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   建物全景模型を上面から。変わった形の建物が橋でつながっている形式なのは、渓谷に沿うように建物を建築するという自然への配慮のためだそうです。

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   建物内の通路。間接照明が多用されていることが印象的でした。

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   キャンパス内の橋から。右端のオレンジ色の建物は宿舎です。

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   宿舎の様子。奥には海が覗いています。

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   宿舎の様子2。大学内とは思えない。

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   研究棟にはカップ麺の自販機がありました。研究棟のあちこちにソファーが置いてあり、研究者間の交流を促す構造になっていましたね。

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   沖縄らしくDr.Pepperが100円で売ってました。

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   紹介いただいた中で印象深かったのは、保育施設をキャンパス内に作ったことです。当初は一部から反対意見もあったそうですが、学生・教職員宿舎と合わせて良好なサイクルが構築できているようです。定員がいっぱいになったので、新たな施設を建築しているとのことでした。

   また、学生募集についても、いかにしてオックスフォードやケンブリッジなどではなくOISTを選んでもらえるか、という点に苦心されているようでした。特に、学生がOISTを選ぶ必然性は何か、という徹底した学生視点で考えられていたことが深く印象に残っています。

   教員や学生の過半数が外国人である一方、職員は日本人、特に沖縄出身者が多いとのことでした。また、国立大学のお寒い状況と比較し、いわゆるテクニシャン(機器等の技術支援スタッフ)を多く採用しているとの印象を受けました。

   やはり、具体的な運営体制が気になるところです。教員と職員の役割分担はどうなのか、研究科組織ではない完全な教員個別のラボ制であるからこその運営体制が構築されているのか、今回は伺うことができませんでしたので、改めて調べてみたいと思っています。

会議運営のフロー図を整理してみた。

 好きな仕事の一つは学内会議の運営です。特に、自分で資料を作る会議は、どのように議論を発展させようか悩みながら、自身の整理を紙に表現していくところが好きですね(会議運営というより資料作りが好きなんだと思いますが。。。)。

 いつもどのように会議を運営しているのか、会議当日までのフロー図に整理してみました。なお、これは、私が後輩に会議業務を移譲する際に作成した資料が元になっています。

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 以下、ちょっとしたポイントや留意点です。

審議事項

 そもそも審議すべき事項がなければ会議を開く意味はありません。集合して話す意味がなければメール開催でもいいわけです。昨年度の状況も確認しながら、日程調整に先立ち、この時期に審議すべき事項を自分の中である程度固めます。

日程調整

 大抵は、議長となる者及びその会議で必ず出席してほしい者の予定(◯日の午後、△日の午前など)を2,3候補ほど押さえ、1時間刻みでその他委員の都合を確認します。それを集計して、開催日時を固め、議長となる者に確認します。議長からOKが出れば、開催案内に先立ち、すぐに委員に日時と場所を連絡します。

会場調整

 委員に候補日の都合を照会する段階で、最大出席者数を踏まえ、候補日の全てに会議室を仮予約しておきます。会議室の予定表が埋まっている場合でも、我々と同様に仮予約である可能性がありますので、予約している担当者に連絡して調整可能か確認します。

定足数

 日程調整時に都合を確認しているとは言え、実際の出欠は当日になってみないとわかりません。特に、規定上定足数がある会議では、欠席者が多ければ何かを決めることすらできません。実際に欠席者が多く定足数に満たない場合の対応は、以下のような感じでしょうか。

  1. 会議を開催せずに、再度日程調整から始める。
  2. 集合開催とせずに、後日メール開催にて審議を行う。
  3. 議決できないことを承知で、委員による意見交換会(懇談会)とする。
  4. あらかじめ委任状を収集する。

 これらも、審議事項がその会議で決めなければならないものか、意見交換を目的としたものかにより、対応が異なります。中央教育審議会などで稀に「懇談会」という会議がありますが、あれは定足数が満たなかったために会議ではなく懇談会という形で意見交換を行なっていることがあるようですね。

(参考)中央教育審議会令:文部科学省

第八条 審議会は,委員及び議事に関係のある臨時委員の過半数が出席しなければ,会議を開き,議決することができない。

準備物

 会議によっては、机上にマイク、飲料、筆記用具、ネームプレート、封筒、メモ用紙などを置く場合があります。その場合は、事前に物品を必要な数準備しておきます。

 

 ざっと整理した感じでは、いつもこのように業務に取り組んでいます。たまに3,4の会議が同時進行する時がありますので、このように今どの段階で次に何をするかを整理しておかないといけません。

専門職大学院設置基準が改正されました。

専門職大学及び専門職短期大学の制度化等に係る学校教育法の一部を改正する法律等の公布について(通知):文部科学省

 専門職大学及び専門職短期大学の制度化等に係る学校教育法の一部を改正する法律等が公布されました。本件については、「中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会」で審議されていた新たな学校種(新たな枠組み)がその後の議論により大学・短大の枠組みに含まれることになって以降私の興味が削がれましたので、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会」での審議やパブコメ等あまり注視してきませんでした。しかし、公布された法律等を確認すると、既存の専門職大学院設置基準が改正されているではありませんか。これは全くノーマークでした。私の本務にも若干関連することであり、同時期に開催されていた専門職大学院ワーキンググループの審議内容をもっと確認しておくべきだったと反省しています。

 改めて、改正前後の専門職大学院設置基準を確認します。

改正後 改正前
(教育課程の編成方針)
第六条 専門職大学院は、その教育上の目的を達成するために専攻分野に応じ必要な授業科目を、産業界等と連携しつつ、自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする。
(教育課程)
第六条 専門職大学院は、その教育上の目的を達成するために専攻分野に、応じ必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする。
専門職大学院は、専攻に係る職業を取り巻く状況を踏まえて必要な授業科目を開発し、当該職業の動向に即した教育課程の編成を行うとともに、当該状況の変化に対応し、授業科目の内容、教育課程の構成等について、不断の見直しを行うものとする。 [項を加える。]
3 前項の規定による授業科目の開発、教育課程の編成及びそれらの見直しは、次条に規定する教育課程連携協議会の意見を勘案するとともに、適切な体制を整えて行うものとする。 [項を加える。]
(教育課程連携協議会)
第六条の二 専門職大学院は、産業界等との連携により、教育課程を編成し、及び円滑かつ効果的に実施するため、教育課程連携協議会を設けるものとする。
[条を加える。]
2 教育課程連携協議会は、次に掲げる者をもって構成する。ただし、専攻分野の特性その他の当該専門職大学院における教育の特性により適当でないと認められる場合は、第三号に掲げる者を置かないことができる。  
一 学長又は当該専門職大学院に置かれる研究科(学校教育法第百条ただし書に規定する組織を含む。)の長(第四号及び次項において「学長等」という。)が指名する教員その他の職員  
二 当該専門職大学院の課程に係る職業に就いている者又は当該職業に関連する事業を行う者による団体のうち、広範囲の地域で活動するも のの関係者であって、当該職業の実務に関し豊富な経験を有するもの  
地方公共団体の職員、地域の事業者による団体の関係者その他の地域の関係者  
四 当該専門職大学院を置く大学の教員その他の職員以外の者であって学長等が必要と認めるもの  
3 教育課程連携協議会は、次に掲げる事項について審議し、学長等に意見を述べるものとする。  
一 産業界等との連携による授業科目の開設その他の教育課程の編成に関する基本的な事項  
二 産業界等との連携による授業の実施その他の教育課程の実施に関する基本的な事項及びその実施状況の評価に関する事項  

 「教育課程の編成方針」に大幅な加筆があり、また、「教育課程連携協議会」の項が新設されています。文部科学省から発出された告示の通知における留意点は以下の通りです。

(2)留意事項

① 教育課程連携協議会の設置形態については,一の専門職大学院に一の教育課程連携協議会を設ける形のほか,分野や専攻等の別により複数の教育連携協議会を設ける形が考えられること。なお,既にいわゆるアドバイザリーボード等の組織を設けている専門職大学院においては,当該既存の組織を活用しつつ,設置基準に定める構成等の条件を整えることにより対応することとして差し支えないこと。また,設置基準上の教育課程連携協議会であることが学内規程等により明らかにされていれば,その名称は必ずしも「教育課程連携協議会」としなくとも差し支えないこと。

② 教育課程連携協議会の構成については,専門職大学院設置基準第6条の2第2項第1号から第3号まで(同項ただし書に規定する場合にあっては第6条の2第2項第1号及び第2号)の構成員をそれぞれ1名以上含むものとし,その構成員の過半数は,当該大学の教職員以外の者とすることを基本とすること。

専門職大学院設置基準第6条の2第2項第2号の「当該専門職大学院の課程に係る職業に就いている者又は当該職業に関連する事業を行う者による団体」は,主として職能団体や事業者団体を想定したものであるが,専攻分野の特性により,当該職業に就いている者又は当該職業に関連する事業を行う者による研究団体なども含み得ること。

専門職大学院設置基準第6条の2第2項第3号に掲げる者を置かないことができる「当該専門職大学院における教育の特性により適当でないと認められる場合」としては,当該専門職大学院が専ら国際的に通用する高度で専門的な知識・能力を涵養することを目的としている場合が想定されること。

⑤ 教育課程連携協議会は,産業界等との連携による教育課程の編成・実施に関する基本的な事項や,その実施状況の評価に関する事項を審議するものであり,教授会その他の審議機関との適切な役割分担により,教育研究機関としての自律性を確保しつつ,産業界等と連携した教育の推進に向け積極的な機能を果たすことが期待されるものであること。

 なお、専門職大学院設置基準の一部改正における留意事項は教育課程連携協議会についてのみ言及されていますが、その前段である教育課程の編成方針について専門職大学の欄にて以下の留意事項が明記されています。

(2)教育課程の編成方針について

専門職大学等の教育は,理論と実務を架橋した教育により,実践的かつ創造的・応用的な能力を育成・展開させるものであること。各専門職大学等においては,産業界等との密接な連携を図りつつ,そのための教育課程を開発・実施し,不断の見直しを行っていくことが求められること。専門職大学設置基準第10条第4項及び専門職短期大学設置基準第7条第4項に規定する「適切な体制」の整備としては,授業科目の開発等に関する担当組織を設けることや,教育内容・方法の開発等に経験・実績のある教員等を配置することなどが考えられること。 

 専門職大学設置基準第10条第4項は専門職大学院設置基準第6条第3項と同様の条文ですので、必ずしも専門職大学院でも同様の対応を取る必要はありませんが、留意事項は参考になると考えます。

 特に気になるのは、既存の専門職大学院にもこの改正後条文が適用されるため、どのように対応すれば良いかという点ですね。この点を、教職大学院法科大学院における専門分野別認証評価との関連を踏まえ、考えてみます。

 教職大学院認証評価基準においては、今回の改正に関連して、以下の基準等が存在します。

3-2-1:授業内容、授業方法・形態

(1)授業内容は、教育現場における課題を積極的に取り上げ、その課題について検討を行うようなものとなっているか。

3-3-1:学校等における実習

(略)

9-1-3:学外関係者(当該教職大学院の教職員以外の者。例えば、修了生、就職先等の関係者等)の意見や専門職域に係わる社会のニーズが教育の状況に関する点検評価に適切な形で反映されているか。

10-1-1:教育委員会及び学校等との連携を図る上で教職大学院について独自に協議する組織が、管理運営組織体制の中に明確に位置づけられ、整備されているか。

10-1-2:上記組織が、適切に運営されており、同組織で議論されたことが、実際に教育活動等の整備・充実・改善にいかされ、恒常的に機能しているか。

 教職大学院認証評価に係る評価基準においては、すでに学校現場における実習や関係者との協議組織の設置について点検されることとなっています。そのため、今回の改正における「教育課程連携協議会」に類する組織は多くの教職大学院において設置されているものと推測されます。ただし、今回の改正では、教育課程連携協議会の構成員が指定されるとともに、その構成員の過半数は当該大学の教職員以外の者とすることを基本とされています。まず、既存の組織がこの要件に合致するかを確認する必要がありますね。

 法科大学院の認証評価機関はいくつかありますが、大学改革支援・学位授与機構の評価基準を確認します。

2-1-6

(2)(1)に掲げる必修科目6単位のほか、次に例示する内容の授業科目その他の法曹としての技能及び責任等を修得させるために適切な内容を有する授業科目((1)に掲げる内容の授業科目を除く。)のうち、4単位相当が必修又は選択必修とされていること。

エ エクスターンシップ(法律事務所、企業法務部、官公庁法務部門等で行う研修)

解釈指針11-1-1-4

自己点検及び評価の結果について、法律実務に従事し、法科大学院の教育に関し広くかつ高い識見を有する者を含む、当該法科大学院を置く大学の教職員以外の者による検証を行い、その結果を当該法科大学院の教育活動等の改善に活用することが望ましい。

 私は法科大学院に関する状況についてあまり詳しくありませんが、学外者を含んだ組織により教育内容を点検等することは認証評価基準に明記されていないようです。法科大学院がこの規定に該当するならば、対応を迫られることになりそうですね。

 これらの改正は、学校教育法の改正に合わせ、平成31年4月1日から施行されます。残り一年半ほどで対応を検討しなければなりません。

文部科学省が策定したロジックなきロジックモデル

「第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について」に関する意見募集の実施について:文部科学省

この度、「第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について」に関する意見募集を実施しますので、お知らせします。

 第3期教育振興基本計画の策定に関する意見募集のパブコメが出ています。教育振興基本計画は、教育基本法

第十七条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

に定められる計画であり、第1期(平成20〜24年度)、第2期(平成25〜29年度)に続き、現在、第3期(平成30〜34年度)の計画が策定中です。

 公表された資料で一番仰天したのが、「今後5年間の教育政策の目標と主な施策群(ロジックモデル) 」です。いや、これロジックモデルじゃないでしょ!

 ロジックモデルとは、

2.ロジックモデルについて:文部科学省

前述のとおり、セオリー評価とは、「施策の論理的な構造」を明らかにし、その質や内容を評価する手法であるが、この「施策の論理的な構造」のことをロジックモデルという。つまり、ロジックモデルとは、ある施策がその目的を達成するに至るまでの論理的な因果関係を明示したものである。
ロジックモデルを策定することは、事前又は事後的に施策の概念化や設計上の欠陥や問題点の発見、インパクト評価等の他のプログラム評価を実施する際の準備、施策を論理的に立案する等のうえで意義のあることである。

であり、目的達成までのプロセスを示したものです。大雑把に言うと、目的達成までの道筋を

  1. 資源・インプット
  2. 活動
  3. アウトプット
  4. アウトカム
  5. インパク

に整理し、それぞれを論理的に結合したモデルを作成することで、目標達成までの道のりや各段階での指標の役割を明確に示すものです。一口にロジックモデルと言っても様々なタイプがあり、例えば、ケロッグ財団が作成したロジックモデル策定ガイド(邦訳:農林水産政策情報センター)では、以下のようなモデルが一例として示されています。

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 ここからわかるように、各要素をつなぎ、

プログラムの構成要素を連携する推論のチェーン,すなわち「もし…ならば,どうなる。」(if-then)という表現の形式に従って進むこと

(ロジックモデル策定ガイドP10)

により、目的に近づく方法やどの程度近づいていくのかを知ることができるようになります。また、各要素において数的指標を設定し計測することで、例え目的の到達程度の直接測定することが困難であっても、ロジックモデルの各要素の数的指標の結果を積み上げることで、目的に近づいていることを証明することができます。すごーく単純に言えば、「風が吹けば桶屋が儲かる」のように順々に話が繋がっていくようなものです。

 文部科学省では、科学技術・学術政策局が主導する研究開発評価活動において、ロジックモデルが使用されてきました。私も、評価業務や研究開発評価業務に携わることで、ロジックモデルや数的指標のあり方について訓練を重ね、政策や施策、プログラム、計画の策定・評価を学んできました。

<ロジックモデルに関するウェブ上の情報>

 翻って、文部科学省が公表している「今後5年間の教育政策の目標と主な施策群(ロジックモデル) 」を確認すると、一応線らしきもので要素が繋がってるものの、ただ関連する取り組み(具体的な取り組み・行動ではなくただの方針のようなもの)をまとめているものであり、論理的関係が全くわかりません。例えば、「教員・学生の流動性向上」が上位概念である「問題発見・解決能力の修得」に繋がっていますが、「教員・学生の流動性向上」として具体的にどのような資源を投入しどのような行動・施策を行うのか、それによりどのような結果が生じ、その結果を受け取った学生にどのような変化が生じたことにより、「問題発見・解決能力の修得」が達成できるのか、この図のみでは不明です。まさにロジックなきロジックモデルとなっています。

 単に取り組みを並べたものならば、従来のポンチ絵と何も変わりません。資源・インプット、活動、アウトプット、アウトカム、インパクトが整理されておらず、数的指標のようなものがあろうとその数的指標間の関係性がわからず、例えデータを集めようとも目的の達成に近づいているか明瞭に判断し難い状態になることが想像できます。つまり、

また、基本的な方針ごとに、今後5年間の教育政策の目標や、それを実現するために必要な施策群について、整理を行った。この際、今後の教育政策の推進に当たっては、客観的な根拠(エビデンス)を一層重視することが求められていることから、現行計画の進捗状況の分析を踏まえつつ、ロジックモデルの活用による目標と指標、施策群の関係の明確化を実施した。

(第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について )

が十分に達せられているとは考えられません。

 教育の効果測定や成果検証は、確かに非常に難しいことではあります。ただ、日本の教育界において非常に重要な役割を果たす文部科学省、またその筆頭局筆頭課である生涯学習政策局政策課だからこそ、教育のロジックやその効果・成果に対し思慮深く対応してほしいと思っています。

学生の選挙活動には注意すべきことがある。

www3.nhk.or.jp

衆議院は、正午から開かれた本会議で、大島衆議院議長解散詔書を読み上げ、解散されました。各党は、来月10日公示、22日投票の衆議院選挙に向けて、事実上の選挙戦に入ります。

 衆議院が解散となり、10月22日投票の選挙戦となりました。選挙権年齢が18歳に引き下げられたこともあり、今回も大学に期日前投票所が設けられるかもしれません(前回の参院選と異なり予期されなかった選挙ですので、可能性はそれほど高くはないかもしれませんが…)

www.hokkaido-np.co.jp

 学生による選挙活動も色々なところで行われるとは思いますが、そんな中思い出すのは学生が公職選挙法違反に巻き込まれた?事件ですね。

違法選挙バイト、学内に掲示 報酬もらい被買収容疑 宮崎【西部】 

 11月の衆院選で、運動員としての届けがないのに宮崎1区の無所属候補派の陣営から報酬を受け取ったとして、宮崎県警が、宮崎公立大(宮崎市、浜野崇好学長)の学生10人を公選法違反(被買収)の容疑で書類送検していたことが5日、分かった。学生たちは、陣営が大学学生課に依頼して学内の掲示板に掲示したアルバイト募集の求人票をみて応募していた。

 調べでは、学生たちは、同選挙区で立候補し落選した小城正克氏派の選挙運動総括主宰者、無職A被告(45)ら2被告=いずれも公選法違反(事後買収)の罪で起訴=から、選挙後の11月11日ごろ、宮崎市内の選挙事務所などで、ビラ配りや街頭演説などを手伝った報酬計約23万円を受け取ったとされる。

 公選法では、報酬を受け取っての運動は選挙カーの運転や手話通訳などに限られ、県選挙管理委員会への届け出も必要だが、A被告らは届け出ていなかった。

 大学によると、衆院選公示前の10月23日、A被告から同大学生課にファクスで求人票が届き、掲示を依頼された。「こじょう正克後援会事務所」の名で、業務は「事務一般」、時給は1千〜800円だった。

 同大の山根彰事務局長は「小城氏が立候補していたことは、職員はみな知っていたが掲示を取りやめなかった。本当に申し訳ない」と話している。

(2003年12月05日 朝日新聞夕刊)

「動機は若さの訴え」 小城氏陣営の2人、大学生買収初公判/宮崎

 衆院選の宮崎1区で落選した小城正克氏派の選対幹部で、公選法違反(事後買収)の罪に問われた日向市高砂町、無職A被告(45)と宮崎市霧島2丁目、同B被告(54)の初公判が24日、宮崎地裁(蛭田振一郎裁判官)であった。検察側は両被告が宮崎公立大学生に金を渡し選挙運動させたのは「候補者の周りを若者で固め、若さをアピールするためだった」と指摘した。両被告は起訴事実を認めた。

 起訴状によると、両被告は11月11日ごろ、同市内の選挙事務所などで、運動を手伝った大学生10人に報酬計約23万円を手渡したとされる。

 大学生10人は同法違反容疑で書類送検された。被告人質問でA被告は「公選法の細かい規定には無知だったはず。将来を考えると申し訳ない」と学生らに謝罪した。

●宮崎公立大が再発防止へ対策

 宮崎市の宮崎公立大(浜野崇好学長)で24日、事務組合議会が開かれ、同大が掲示した求人票に応じ選挙事務所でアルバイトした学生が公選法違反(被買収)容疑で書類送検された問題について、大学側が経緯を説明した。事務局のミスを認め、(1)選挙関係の求人は一切受け付けない(2)掲示の決定は職員ではなく課長決裁にする、などの対策を始めたことが報告された。

(2003年12月25日 朝日新聞朝刊 )

  書類送検された学生は、最終的には地検で不起訴処分になりました。新聞データベースを調べたところ、神奈川県や大阪府静岡県、福岡県などでも、県議選や府議選にて、同様の事件が発生していました。

 上記の宮崎県の事件は14年ほど前のものではありますが、現在でも公職選挙法には選挙活動について様々な制約が記されおり、学生が抵触する可能性があります。

公職選挙法

(買収及び利害誘導罪)
第二百二十一条  次の各号に掲げる行為をした者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
一  当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。
二  当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対しその者又はその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき。
三  投票をし若しくはしないこと、選挙運動をし若しくはやめたこと又はその周旋勧誘をしたことの報酬とする目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し第一号に掲げる行為をしたとき。
四  第一号若しくは前号の供与、供応接待を受け若しくは要求し、第一号若しくは前号の申込みを承諾し又は第二号の誘導に応じ若しくはこれを促したとき。
五  第一号から第三号までに掲げる行為をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき。
六  前各号に掲げる行為に関し周旋又は勧誘をしたとき。

 選挙活動に対する注意点については、概ね以下のサイトにまとめられています。

大学生として知っておきたい選挙違反 ~18歳選挙権時代を考える~

18歳からの政(まつりごと)入門(10) 選挙運動に報酬はない|大石格|日経カレッジカフェ | 大学生のためのキャリア支援メディア

選挙運動の「アルバイト」はルール違反!? 選挙を手伝うときの「注意ポイント」 - 弁護士ドットコム

 職員としても押さえておきたいところですね。